写真7.完成品 

レンズで集めてシューティング

光線銃シューティングゲームの光学系

こんにちは(^-^)。
このたび、ひょんな事から、光通信を用いたシューティングゲームのデモンストレーションシステムを作ることになりました。

これは、プレーヤーが銃型のコントローラーを手に持ち、可視光LEDの光を発射させて、標的のセンサーに当てるゲームです。光通信には、ISPの保有するARMとFPGAを実装した汎用光通信ボードを使います。
このボードは、可視光・赤外線高速通信に対応し、各種通信インタフェースと外部入出力I/O、記憶メディアカードや音声の出力インタフェースまで備えた優れモノ。

当初、「必要な部品は社内にすべて揃っているのだから、楽勝だよな~」と思っていたのですが、LEDの光をレンズで集めて遠くまで届くようにするのが存外難しく、かなり手間取ってしまいました。

・・・ということで、今回はレンズを使ったLEDの集光実験を、レポートしたいと思います。

目標

  • シューティングゲームを作るため、
  • 発光ダイオードの光を集束光として
  • 遠くまで照射できるようにする。

LED選定

  • 選択肢としては、「表面実装形LED」と、「砲弾型LED」がある。
  • 今回は、銃への装着を考慮して「砲弾型」を選定。
  • LEDは、いろいろな照射角の製品が販売されている。
  • 今回は、なるべく遠くまで光を届けたいため、照射角15°で明さが45カンデラのものを選択。

照射角15°のLEDをそのまま照射すると、計算上は1.5mの距離で、およそ40cm程度に光が拡散するはず。実際にやってみると、約50cmに拡散し、光のエッジは、かなり不明瞭となりました。(写真1)

これを、数cmまで集束させ、光のエッジを明瞭にすることを目的とします。

光を集束させるためには、レンズを使います。いろいろ試した結果、100円ショップでも手軽に調達できる、虫眼鏡や双眼鏡を使ってみました。(写真2)

写真1.15°のLEDをそのまま照射
写真1.15°のLEDをそのまま照射
写真2.使用した虫眼鏡・双眼鏡

実験 その1

入手したレンズによる、LEDの集光実験を行いました(写真3)。
レンズからボードまでの距離を1.5mで固定。LEDの光が集光するように、
LEDとレンズの距離を調整して、計測した結果が表1となります。

写真3.<実験 その1>の様子
写真3.<実験 その1>の様子
Noレンズ径レンズ厚レンズ種焦点距離集光径備考
130mm2.5mm平凸レンズ20.5cm30mm双眼鏡1
226mm3.0mm平凸レンズ11.5cm60mm双眼鏡2
326mm6.0mm両凸レンズ5.5cm140㎜No2の2枚重ね
445mm5.5mm両凸レンズ11.0cm70mm虫眼鏡1
560mm7.0mm両凸レンズ17.5cm50mm虫眼鏡2

想定していた以上に、キレイに集光しました。あとはこのしくみを、銃型コントローラー(写真4)に組み込むだけです。
このコントローラーは、銃身が13cmしかありませんので、銃口にレンズを取り付けるとしても、焦点距離と集光径を考えると、「No2」のレンズが最適です。

実験 その2

続いて、銃へのLED組み付けのため、内径5mmのアルミパイプを設置しました。レンズと光源であるLEDの間に、余計な物が入らないようにするためです。(図1)

図1.取付想定図
図1.取付想定図

我ながら「完璧じゃん!」と思いつつも、とりあえず治具で確認してみました。
そしたらですね、なぜか、集光された光が非常に弱い…!
しかも円の周りに、ドーナッツのような光の輪ができています(写真4)。

写真4.パイプを使った集光実験様子

パイプのせいで、レンズに当たる光量が減っているからかな…とも思いましたが、パイプの出口付近がやたら明るいことに気づき、レンズとパイプの距離を離してみました。
すると、「実験その1」の時とほぼ同様の結果になるじゃないですか!(写真5)
つまり、パイプの中で光が乱反射するため、パイプの出口付近が光源となってるのかぁ・・・
でも、これではコントローラーの中に組み込むことができません。

写真5.パイプを使った集光実験様子 その2
写真5.パイプを使った集光実験様子 その2

いろいろと試行錯誤した結果、以下のような結論にたどり着きました。

「綺麗な集光を得るためには、
光源から直接光のみをレンズに当てる。
そして反射光は、可能な限り排除する。」

光源から直接光のみがレンズに当たっている状態では、図2のようにきれいな集光を得られます。しかし、光源とレンズの間に反射物が存在すると、図3のように余計なところにも光が照射されてしまいます。パイプを設置した場合のドーナッツ現象も、同じ理由によるものです。

要するに、反射光がレンズに入らなければ良いのですが、細いパイプを使う場合、強力なLED光の反射を確実に押さえることは、ほとんど不可能です。パイプの中をつや消し黒で塗りつぶしたりしましたが、目立った効果は得られませんでした。

図2.理想的な構成
図2.理想的な構成
図3.反射物の問題がある構成
図3.反射物の問題がある構成

以上のことを踏まえて、銃型コントローラーへの実装を以下のように工夫しました。
(図4、写真6)

  1. レンズ径を13mmと小さくする
    レンズ径が小さいと、光源からレンズまでの直接光の経路を限定的にできる。ただし、光量は減少するので、13mm程度がちょうど良さそうである。
  2. 銃身の内側をつや消し黒で塗装
    直接光の経路外でも、反射光を発生させるので、つや消し黒で反射を極力抑える。
  3. 銃身内に設置する電子基板の上を、ベルベット生地で覆う
    銃身内には、光通信用の電子基板を設置する必要がある。直接光の経路にはかからないものの、反射物にはなってしまうため、黒い布をかぶせて対応。
図4.最終実装図
図4.最終実装図
写真6.実装実物
写真6.実装実物

このような紆余曲折を経て、できあがった銃型コントローラーが写真7です。そして、射撃している様子が写真8。
サイレンサー風に、表1「No1」のレンズを装着して集光径をより小さくしたのが、写真9,写真10。
まだまだ謎は多いものの、とりあえず当初の目的は達成できました。v(^-^)
それにしても、“光の精霊”さんと仲良くするのは、なかなかむずかしいものです・・・。

写真7.完成品 
写真7.完成品
写真8.射撃風景
写真8.射撃風景
写真9.サイレンサー風交換レンズ付
写真9.サイレンサー風交換レンズ付
写真10.集光の違い
写真10.集光の違い