エッジAIでセマンティックセグメンテーション︕ REELSSの紹介(その2)

エッジAIでセマンティックセグメンテーション! REEL SSの紹介(その2)

本記事は、ISPが独自に開発したセマンティックセグメンテーションのアルゴリズム「REEL SS」と、そのエッジAIにおける活用についての連載の第2回です。 前回は、REEL SSについて、その動作の概要を画像と共にご説明しました。今回は少し寄り道をして、エッジAIの概要や特徴について紹介しようと思います。

そもそもエッジAIとは

エッジAIとは、ネットワークの端(= エッジ)に位置する端末(=エッジデバイス)上でAI処理を行う仕組みです。エッジAIを理解するためには、対照的な仕組みのクラウドAIと比較するのが分かりやすいでしょう。

次の図は、エッジAIとクラウドAIのイメージを表した図です。

エッジAIの構成
エッジAIの構成
クラウドAIの構成
クラウドAIの構成

いずれの場合も、サーバと、ネットワークを介して接続される端末がある点は共通しています。異なっているのは

  • エッジAIでは、エッジ端末内でAI処理を行い、処理結果のみをサーバに送信する
  • クラウドAIでは、エッジ端末内ではデータの取得・送信のみを行い、サーバ側でAI処理を行う

という点です。このような構成の違いによって生じる、エッジAI・クラウドAIそれぞれの長所・短所をまとめたのが次の表です。

 

エッジAI

クラウドAI

長所

  • リアルタイムに処理可能
  • データ通信量が少ない
  • 一台あたりの端末は安価
  • 一台が故障してもシステム全体に影響を与えない
  • 大規模・高度なAI処理が可能
  • 導入後も比較的柔軟なシステム変更が可能
  • 導入・管理が低コスト

短所

  • 一台当たりの処理性能はクラウドAIには劣る
  • 端末が多いので導入・管理が難しい
  • リアルタイム処理が困難
  • データ通信量が多い
  • サーバがダウンするとシステム全体に影響が出る

具体的な導入事例は多岐に渡りますが、例えば、瞬時の判断が必要とされる自動運転はエッジAIが活躍する代表的な事例です。一方で、Web広告の最適化を行う際は、大量のデータを収集し大規模な処理を行うのに適したクラウドAIに軍配が上がるでしょう。

このように、エッジAIとクラウドAIは相補的な方式となっており、それぞれに長所・短所があります。AIを利用したシステムを構築する際には、これらの特徴を理解して課題に適した方式を選択することが重要です。

終わりに

本記事では、エッジAIについて、クラウドAIとの比較を通してその概要や特徴について簡単に説明いたしました。

さて、前節でご覧いただいた通りエッジAIには

端末一台あたりの処理能力はクラウドAIと比較すると低い場合が多い

という問題がありました。しかし裏を返せば、もしもエッジ端末上で高速に動作するAIエンジンがあれば、エッジAIの弱点をカバーすることが可能だということになります。このような動機から、ISPではREEL SSをエッジAI化すべく、より高速・軽量に動作するよう開発を行ってまいりました。実は、前回の記事でお見せしたREEL SSの使用例は、全てエッジAI端末 Jetson Nano上で学習・推論したものなのです!

本連載最後となる次の記事では、REEL SSがJetson Nanoで動作する速度を計測した結果をご紹介いたします。

(なおISPでは、エッジAIのもう一つの弱点である導入・管理の難しさについても、ROS2と呼ばれるプラットフォームを用いたソリューションを提案しております。こちらも後日紹介予定です)