16ビット化で、何が変わる?−「ROBUSKEY for Video」最新バージョン

「バージョン1.2」によって、最大16ビットカラーでのクロマキー合成に対応した「ROBUSKEY for Video」。今回のアップデートによって、映像制作現場にもたらすメリットを、わかりやすく解説します。

by Tadaharu Inoue 2013/10/16

先日お知らせしましたとおり、2013年9月12日より、ISPでは動画用クロマキー合成プラグイン「ROBUSKEY for Video」の最新版「バージョン1.2」の提供を開始しています。
今回のアップデートによって、最大16ビットカラーでのクロマキー合成に対応したわけですが、このことが動画編集作業にどのようなメリットをもたらすのか「いまいちピンと来ないんだよね・・・」とおっしゃる方も、中にはおられると思います。映像制作の現場では現在、ファイルベースでの作業が浸透しており、また、ビデオカメラの高性能化・高画素化が顕著です。デジタル一眼レフによる動画撮影も一般化し、「最近はムービー制作の依頼も受けている」というフォトグラファーも増加しています。
こうした背景を踏まえて、今回は「デジタル画像」の基礎や「ビット」という単位の解説を織り交ぜながら、16ビットカラーで画像処理を行うことのメリットについて、お話しします。

今回のサマリ(要点)

  • ビデオカメラの高性能化・高画素化で、ソフトウェア側(サイド)も性能向上が強く求められている。 (入力される画像を上回る、高い分解能が必須となっている)
  • 「ROBUSKEY for Video」が16ビットカラーでの演算に対応したことで、10bit/12bit YUVなどデジタルシネマカメラで撮影した素材を、最大限に活かすことができる。
  • 8ビットカラーでは不十分だった微細な色の変化を表現できるようになり、従来よりもさらに高品質なクロマキー合成が実現する。
  • 編集作業においては、画像補正の自由度が飛躍的に高まる、画像の劣化を最小限に抑えることができる、階調飛び(★)も少ない・・・といったメリットが享受できる。

そもそも、デジタル画像とは

「bit」や「画素」という、ふだんよく耳にする単位の意味が、そもそも理解しづらい・・・という方のために、まずデジタル画像に関する基本的な説明から始めてみます。 私たちがふだんの業務やプライベートで、デジタルビデオカメラを用いて撮影・記録している「画像」は、画像と音声の情報を「デジタルデータの集合体」として表現したものです。

「デジタル画像」の例

左側の花の画像を、白黒のアナログ写真だと仮定すると、これをデジタル化するためには、まず縦・横に格子状の線を引き、均等な大きさのブロックに分割する必要があります。たとえば50×50(計2,500個)のブロックに分割すると、右側のような画像になります。 この2,500個のうち、比較的暗く見えるブロックは「0」、明るく見えるブロックには「1」という数値を割り振ります。そして、「0」のマス目を「黒」で、「1」のマス目は「白」で表示するという命令を与えると・・・

・・・このような画像が出来上がります。以上が、「画像のデジタル化」プロセスを、最もシンプルに表した例です。 このデジタル化の過程で、格子状に分けた2,500個のブロックのことを、「画素(ピクセル)」と呼びます。画素数をもっと増やすと、花の写真はより細かいブロックで表現され、つまり、より精度の高いデジタル画像が作成できるというわけです。

濃淡の情報=ビット深度が、画像の質を左右

しかし、私たちがふだん目にしている鮮明でなめらかなデジタル画像は、画素という単位だけで成り立っているわけではありません。なぜなら単に「明るい」「暗い」という2種類の情報だけでは、いくらブロックを細かく分割したところで、デジタル特有の不自然さが残ってしまうからです。
では、実際の被写体(対象物)のようなリアルな画像として記録するためには、あと何が必要なのでしょうか・・・? そう、もうおわかりですね。「濃淡」の情報です。
この濃淡の加減は、「ビット」という単位で表しています。「8ビット」を例に説明しますと、ひとつの画素(ピクセル)について、真っ黒(下図の「0」)から真っ白(下図の「255」)までを、最大で2の8乗(=256段階)の色で表示することができます。

このような、ひとつの画素に対して適用する成分(この例では、「白黒の濃淡」)を表すために使用するビット数のことを、「ビット深度」と呼びます。通常、「8ビット深度の白黒画像」というふうに使われています。 そして、この「濃淡」の情報を、先ほどの花の画像に適用すると、下のような結果を得ることができます。

8ビットの濃淡情報を付加したデジタル画像

画素という単位だけでデジタル化した場合よりも、元の被写体に近い、より立体的な画像として再現できるようになることが、おわかりいただけると思います。もちろん、画素数をさらに増やすことで、元のアナログ写真に近い、より鮮明な画像になります。
なお、今回の例では、わかりやすくするために白黒画像のサンプルを用いましたが、カラー画像でも基本的な原理は同じです。8ビット深度のRGB形式(赤・緑・青の3色を組み合わせてカラーを表現する形式)の場合、赤・緑・青の各成分の濃淡を0~255の範囲で表し、それらの色を組み合わせることで、計1,677万7,216パターン(赤256色x緑256色x青256色)もの色を表現できます。

RGBでデジタル変換した例(50×50 ピクセルの場合)

このような8ビット深度のカラー画像を、一般に「8ビットカラー」と呼びます。従来までの「ROBUSKEY for Video」は、この「8bitカラー」での演算による、クロマキー合成の機能を提供していました。

16ビットカラーで画像処理を行うメリットとは

このたび提供を開始した「ROBUSKEY for Video」の最新版「バージョン1.2」では、最大「16ビットカラー」でのクロマキー合成に対応したわけですが、このことが作品の質と動画編集作業にどのようなメリットをもたらすのかを、ここまでの説明を踏まえて解説します。 16ビットカラーとは、ひとつの画素に対して、16ビットの色情報を持たせる方式です。すなわち赤・緑・青の各成分を、最大で「2の16乗(=6万5,536段階)もの色で表示することができます。 これによって、8ビットカラーでは不十分だった微細な色の変化を表現できるようになり、なめらかなトーンを持った映像制作が可能になりました。また、編集作業においては、画像補正の自由度が飛躍的に高まる、画像の劣化を最小限に抑えることができる、階調飛び(★)も少ない・・・といったメリットが出てきます。

ビデオカメラの性能も、最近は格段に向上しており、ピクセル深度が8ビットを超える「10 bitYUV」「12bit YUV」などで撮影できる製品も登場しています。撮影した素材が12ビットなのに、画像処理の計算を8ビットで行なってしまうと、微妙な色彩の違いを演算の途中で捨ててしまうことになります。これではせっかくのハイエンド機のメリットを活かせず、非常にもったいないですよね。つまり16ビットカラーでの画像処理は必須となります。

ROBUSKEY for Videoをお使いの方は、この機会にぜひ最新版をお試しください。すでにライセンスをお持ちの方なら、無償でアップデートできます。
→ 最新版「ROBUSKEY for Video V1.2」のダウンロードはこちらから。

(★)参考情報<階調飛びの例>


上の図は、画像をトーンカーブで明るくした例です(Photoshopを使用)。右上が8ビットで処理した結果、右下が16ビットで処理後に8ビットに戻した結果です。この画像だけでは、16ビットのメリットがややわかりにくいと思いますので、処理後の輝度のヒストグラムも見てみましょう。

このヒストグラムを見れば、8ビットで処理した結果は階調飛びを起こしてしまっていることが明確にわかります。この階調飛びが原因で、例えば青空のような滑らかなグラデーション部分に、細かい色の段差が表れてしまうことがあります。このような現象を防ぐために、画像処理は16ビットカラーで行うことをおすすめします。

各ホストアプリケーションで、高ビット深度カラー設定にする方法

●Adobe After Effectsの場合
[ファイル]-[プロジェクト設定]-[カラー設定]の「色深度」を、「16bit/チャンネル」に変更します。

●Grass Valley EDIUS Pro 7の場合
[設定]-[プロジェクト設定]-[現在の設定を変更]-[詳細設定]の「ビデオ量子化ビット数」を、「10bit」に変更します。