AIにブレイクスルーをもたらした Deep Learning。その高い能力・性能は、昨今では様々な分野へ応用され、社会・経済に大きなイノベーションをもたらしています。
しかしながら、CAEの分野においては、AI・Deep Learning を活用した事例はまだまだ少ないのが現状です。
CAE業界向けにDeep Learningを紹介する取り組みとして、Rescale Japan長尾太介さんと共に、逆問題への適用に挑戦しました。適用する逆問題として、熱拡散問題を取り上げます。
熱拡散問題の逆問題
教師あり学習とし、Deep Learning フレームワークには Google の Tensorflow を使用しました。
ネットワークはCNN(畳み込みネットワーク)を使用しました。今回は、初チャレンジとなるので、MNIST問題を解く際に使用するLeNetをまず使い、感触を確かめるところからアプローチしました。
推定の対象である境界値は、連続値をとりますが、条件などは設定せず、どのような結果が出るかを見てみました。
学習用データの作成
- 境界値温度を乱数で決定
- 拡散方程式を使って28×28のメッシュ部分の温度分布を算出
- 学習用データとして、境界値温度と内部の温度分布を100パターン作成
最終的に、作成した100つの学習用データを可視化すると右のようなイメージとなります。
ネットワークの工夫と結果
はじめに、比較的単純なCNNであるLeNetを用いて解いてみました。
下の図は、ネットワークの構成を図示したものです。
LeNetでの結果は以下のようになりました。
縦軸 : 温度
青線 : 正解値
赤線 : 推定値
全体的な山なりの傾向(温度の高い/低い)は当たっているように見えます。
しかし、細かく見てみますと、正解値から外れている部分もしばしば見られます。
精度としてはまずまずです。
続いて、ネットワークを工夫してみました。
LeNetではFC層で局所的な特徴量 (例えば、隣り合ったピクセル間の特徴量) がひとまとまりになって潰れてしまうため、Convolution層を追加し、局所的な特徴量を残すようにネットワークを調整してみます。
下の図は、工夫した後のネットワークの構成です。
結果は以下のようになりました。
縦軸 : 温度
青線 : 正解値
赤線 : 推定値
全体的に、推定値が正解値を綺麗になぞっていることがわかります。
ネットワークの工夫によって、推定の精度を向上させることが出来ました。
まとめ
- 100程度の学習データにて予測を試みましたが、予想以上の精度での推定が出来ました。
- 引き続き、CAE業界向けのDeep Learningについて、検討を進めていきます。
今回の取り組みは、10/10(火) Rescale Japan株式会社主催の「Rescale Night Tokyo #3」、
及び、NPO法人CAE懇話会主催の「第54回関西CAE懇話会」にて発表を行いました。
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【担当】
久野・長澤(くの・ながさわ)
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