ROSCon2017勉強会参加報告

システム計画研究所 第2セグメント
児玉 俊

概要

2017/10/23(月)に早稲田大学にて開催された「ROSCon2017勉強会」に参加しましたので、ご報告します。

ROSConとは、ロボット制御のためのミドルウェア「ROS」に関する世界的な研究集会で、今年はカナダのバンクーバーで開催されました。
ISPでは、ROSを使用する機会が多くなってきています。 ROSに関する知見も溜まってきていますが、社外の方の話を聞く機会はあまりなかったので、この機会にROSプログラミングの第一線に立たれている方の話を聞き、よりROSへの理解を深めることを目的に、今回参加しました。
本勉強会では、今年のROSConで発表された日本人の方の講演や参加された方からの参加報告、またROSConに限らず、ROSに関する発表も行われました。 自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発者のお話を直接聞けたり、ROS+FPGAの環境構築の苦労話が聞けたりと、大変有意義な時間を過ごすことができました。

会場の雰囲気

人数は100名弱で、大学の研究者、学生だけでなく、企業の方も多くいらっしゃいました。
基本的にフラットな雰囲気でしたが、飛び交う質問は高度な質問が多めでした。
ROSに関して深く理解している方が多かった印象です。

内容

前半3時間がROSConでセッションされた日本人のお二人による講演と学生の方による参加報告、残り1時間がROSに関する自由なテーマでのLightning-Talk (LT)といった構成でした。
ROSConでのセッション採択率は約30%で、今年のROSConでは、日本人は二人だけとのことでした。
各発表に対する概要と所感は以下の通りです。

[1] Autoware: ROS-based OSS for Urban Self-driving Mobility

東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授 加藤真平
自動運転のためのソフトウェア「Autoware」の機能に関する内容でした。
「Autoware」は、自動車の自動運転を行うためのソフトウェア群で、大まかに
 ・街中の地図生成
 ・走行時の運転制御
を行います。
現状の性能は、教習所程度の簡単な道路なら横断者等がいても十分自動運転でき、公道でも高速道路でなければある程度は走ることができるそうです。
現状の課題として、
 ・路駐の車を認識し、回避する
 ・3Dマップを広域に作成する
が挙げられていました。
各モジュールを自分で開発したものに置き換えることもでき、物体検出モジュール、自己位置推定モジュールなどを自由に改変できるとのことでした。(現状は検出器としてSSDまたはYolo2を使用しています。)
研究向けに、KITTIデータセットを用いて、実際に走行しているように見せる機能もありました。
また、試験走行した際のセンサデータ等をrosbagファイルとして無償で公開しているとのことでした(https://rosbag.tier4.jp/)。車載カメラの動画と CAN-busの同期が取れたデータもあり、研究などで色々試す際に使える場面は多そうです。
私自身、自律走行ロボットの開発に従事したこともあり、自動運転自体非常に興味深いので、Autowareの様々な機能を試してみたいです。
Autowareの参考URLはこちらです
https://www.pdsl.jp/fot/autoware/

[2] ROS-Compliant FPGA Component Technology – FPGA installation into ROS

宇都宮大学 大学院工学研究科情報工学専攻 助教 大川猛
ROSをFPGA対応させるといった話題でした。
FPGA対応するメリットとして、Deep Learningにおける推論時には、GPUを使うよりFPGAのほうが、電力効率が良いとのことでした。
手法として、3種類の提案がされており、
A) 「COMTA」を使用した手法(九工大)
B) ROSのinterface部分をFPGA向けに作る手法(宇都宮大)
C) ROSのinterfaceごとFPGAに取り込む手法(宇都宮大)
B) について、ROS + FPGAを初心者が試すにあたり、環境構築を行うツール「cReComp」も開発し、実際、1時間弱で初心者でも作成できたとのことでした。cReCompに関して、次のURLが紹介されていました: https://github.com/Kumikomi/cReComp
C) について、ROSの通信の仕組みに関する情報はソースコードレベルの公開しかないため、今回実装するにあたり、通信の解析を行ったとのことでした。
私自身は、FPGAに触った経験がないのですが、社内では高位合成によるFPGA開発に取り組んでいるメンバもおり、初心者でも環境構築が容易とのことだったので、これを機にFPGAに入門してみたいと思いました。
ちなみに、ISPは宇都宮大学とは以前から関わりがあり、尾崎研究室と「つくばチャレンジ」において共同研究を行っています。

[3] 参加報告

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 博士課程 石田裕太郎
ROSCon自体の概要と、ROSCon2017の内容の概要を報告してくださいました。
ROSConとは、2012年から行われているイベントで、毎回約20-40件の発表があり、そのうち、アメリカ、ドイツの発表者の方がほとんどです。
ROSのユーザ数に関しては、昨年、今年で急速に増加しているようです。
今後のROSの方向性に関しては、「低電力、低スペックな環境での運用」とのことでした。
ROSCon2017では、ROS2に関する講演も多かったようです。
ROS2ではROS1とは異なり、セキュアな通信が可能となりました。ただし、まだROS2の開発は途中段階で、制限事項も多いため、用途によってはROS1を使うほうがよいとのことでした。
私は、ROS1しかまだ触ったことがありませんが、これからROS2の時代になりそうなので、早めに触っておきたいと思いました。

[4] Lightning-Talk発表

5名の方が5分ずつROSに関する発表をされました。
こちらで、ISPのメンバも「ROS+Caffeでシステム構築したらCaffeが上手く動かなかった」というタイトルで、Python Caffe判別モジュールにROSを組み込む際の留意点を実装の観点から発表しました。

Photo

講演の発表資料はこちらです。


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