縮小・拡大処理について その3~視覚特性~



より綺麗に画像を処理するには、観る人間の目の特性に合わせることも重要です。

ここでは、高品位画像リサイズアルゴリズムの開発において、わたしたちが特に考慮した空間周波数特性についてご説明いたします。

目の空間周波数特性

画像データを色(濃度、輝度など)の分布図と考えた場合、その分布を波として捉えることができます。今、明暗を交互に繰り返すパターン(波)を考え、その繰り返しを周波数として捉えます。このとき、この周波数を空間周波数(spartial frequency)といいます。

この空間周波数が低いと明暗パターンの幅は広くなり、逆に空間周波数が高いと明暗パターンの幅は狭くなります。

図: 明暗パターンと空間周波数

空間周波数 低
空間周波数 低
空間周波数 高
空間周波数 高

このことを絵画で言い表すならば、モザイク画は空間周波数が低く、点描画は空間周波数が高い、と言えます。粗いモザイク画に比べ、細かな点描画は滑らかに見えます。違う見方をすれば、細かな点描画で1つだけ違う色の点が混ざっていても識別しづらいですが、粗いモザイク画では判りやすいはずです。

このように、空間周波数と人間の目の識別能力の間には何らかの関係があるようです。

空間周波数とコントラスト(明暗比)の関係を表すものとして MTF (Modulation Transfer Function) があります。MTF はその名の通り、ある空間周波数を持つ波(画像)をコントラスト値に変換するものです。コントラストが低いと見にくくなり、コントラストが高いと見やすくなります。MTF はカメラのレンズ特性を表すために使われたりします。

さて、人間の目の MTF を見てみます。空間周波数 f と視覚系のコントラスト感度 MTF をグラフ化すると、次図のようになります。

図: 視覚系の空間周波数特性
図: 視覚系の空間周波数特性

このグラフを見ると、周波数が高いとコントラストが落ち込んでしまい、ある程度周波数が低いとコントラストが高くなっています。このことから、人間の目は高周波数側に行くほど知覚しづらくなる、ということができます。すなわち、目は高周波領域をカットする一種のフィルタでもあるわけです。

この「高周波数側に行くほど知覚しづらくなる」という特性を考慮して画像を処理すると、より効果が高く処理することができます。

一般に、画像縮小処理を行うと、その縮小された画像の空間周波数は元画像と比べて高周波数側へシフトします。例えば線が描いてある画像を縮小すれば、その線は元よりも細くなります。上のグラフでは、高周波数になるとコントラスト感度が低くなっています。すなわちぼやけて見えるわけです。

このような場合、縮小処理後に強調処理を掛ける(コントラストを上げる)ことで、観る人に画像の「劣化」を感じさせなくすることができます。