画像の縮小拡大といったサイズ変更においては様々なアルゴリズムが存在します。
その一つ一つの品質は千差万別ではありますが、一般的な品質評価手法は存在しないため、普段その良し悪しが評価される事はあまりありません。
ここでは、リサイズ品質の評価の一基準として、CZPを用いた評価手法を紹介すると共に、アルゴリズムによるリサイズ品質を比較検証いたします。
CZPとは
CZP (Circular Zone Plate) は円形ゾーンプレートとも呼ばれ、元々カメラなどの光学機器の周波数特性を測定するために考案されたものです。 また、今日ではこれを転じてディジタルフィルタのフィルタ特性の評価にも使われております。
CZPは正弦(もしくは余弦)曲線を二次元表現したもので、画像の中心を原点とする同心円が幾重にも並び、中心から外側に向かって空間周波数が高くなっていき、ピッチが細かくなっていきます。
下の画像は512×512のCZPです。
f(x,y) = 128sin(cxx²+cyy²)+128 (画像中心が原点)
ただし、cx = π/512,cy = π/512,-256≤x<256,-256≤y<256
画像はドット集合体ですので、CZPには画像サイズによって表現できる明暗の細かさには上限があります。
この上限の周波数をデジタル信号処理ではナイキスト周波数と呼ばれ、画像の角の部分が白と黒が1ドットおきに並んだ状態となります。
CZPを用いたリサイズ品質評価手法
CZPをリサイズし、比較する事でアルゴリズムの周波数特性(品質)を明らかにする事が出来ます。
右の画像は512×512のCZPを縦横それぞれ1/2に縮小したものです。 1/2縮小では元画像の2ドットが1ドットに変換されますので、元画像で2ドット間隔以上の明暗はそのまま縮小され、それ以下の間隔の明暗は平均化されてグレーになっていれば、高品位なアルゴリズムであると言えます。
もう少し正確にいえば、1/2に縮小することで画像のナイキスト周波数も1/2となりますので、元画像においてナイキスト周波数の1/2以上の空間周波数の領域は平均化されてグレーになるということです。
リサイズ時の問題として挙げられるボケとモアレを評価の対象として考えます。
縮小された画像を見てみますと、中心から端までの距離が1/2以上の場所も明暗の模様が出ています。 これは本来存在しない模様ですので、画像が劣化したこと示しています。これがモアレとなってリサイズ時に現れます。
また縮小された画像では、中心から離れるにしたがって、明暗のコントラストが小さくなっていることが判ります。 これは画像においてディテールやエッジの元となる高い周波数成分が本来よりも減衰していることを示しています。 これがリサイズ後の画像が少しボケた印象を与える原因となります。
以上より、品質評価のポイントとして、
1.モアレの原因となる赤枠より外側の模様が出ないこと
2.ボケの原因となる赤枠より内側では明暗のコントラストがはっきりしていること
の2点を見ていくこととします。
下の4枚はそれぞれ
A. 周波数特性に忠実なISPアルゴリズム
B. 市販のプロ向けデジタル画像編集ツール
C. 市販のデジカメ用フォトレタッチソフト
D. シェアウエアの縮小専用ソフト
でCZPの1/2縮小を行ったものです。
C・Dでは外側にかなりの数の模様が浮かび上がっています。 また、Bでも一番外側に模様が出てきています。 それに対し、Aでは殆ど模様が現れていません。 コントラストを見るとBは中心から遠ざかると共に線がぼやけています。 よって、A>B>C>Dというようなリサイズ品質の違いがあると予想されます。
以上より、CZPを利用したリサイズ品質評価基準を元にISPのアルゴリズムの優位性を客観的にも示すことができました。
このページで使用したCZP元画像(512×512)及びISPのアルゴリズムによる縮小画像はこちらよりダウンロードする事が出来ます。 お手持ちのソフトウェアでの品質比較にご利用下さい。
●CZPによる評価
CZP元画像(512×512)
⇒Windows用CZP(BMP)
⇒Macintosh用CZP(PICT)
ISPのアルゴリズムによる縮小画像(256×256)
⇒Windows用CZP(BMP)
⇒Macintosh用CZP(PICT)
*ご使用のディスプレイ、プリンター等の周波数特性によっては、意図した画像が出力されない場合が ございます。予めご了承下さい。